「歩く」動作のエネルギーシステムと補給

先日、ともつまよさんから、とても興味深い質問を頂きました。


≪先日、ひょんな事から、真夜中に25kmほど歩くことになり、(終電がなくなり、たまには歩いて帰ってみようと思ったのです)ほぼ、休憩なしで、4時間半くらいかけて25kmを歩いたのですが、何しろ、夜中とはいえ、この湿度が高い季節なので、水分補給と思い、ポカリスエット900mlを買って、チビチビやりながら幹線道をヒタスラ歩いて帰宅。

ゆっくりなペースですが、疲れたけど、何なく歩き通しました。

こういう、連続のユックリペースも有酸素運動の場合の大腿筋や肝臓のグリコーゲンの減り方って多いのでしょうか?

水分補給ですが、やはり、このくらい歩く場合でも、糖質は含まれていないスポーツ飲料の方がよいでしょうか?

途中、飲んでも、トイレが近くなり、水分補給になっているのか疑問でした。

大腿筋のグロコーゲンの残量にとても興味がわいたので、お時間あるときによろしくお願いいたします。≫


25㎞を歩き通すのは…大変ですよね!

典型的な、LSD(ロング・スロー・ディスタンス)です。

「ひょんなことから」と言わず、月に2~3回、「あえて」やっていただけると、とても良いと思いますよ(笑)。

ご質問は、このような運動の際、エネルギーシステムはどのように作用しているのか、また、「補給」はどうしたらよいのかの2点だと思います。

まずは、エネルギーシステムにつて…。

ご質問のように、ゆっくりと歩いている時にも、筋グリコーゲンは使われています。

同時に、脂肪酸もエネルギーの材料として使われています。

比率としては、どちらかといえば、脂肪酸の代謝が上回っていると思います。

ともつまよさんの、運動能力が分かりませんが、「疲れたけど、難なく歩き通した」ということですから、筋グリコーゲンを分解しきれずに、乳酸になってしまう事態は、最小限だったに違いありません。

ご質問では、「大腿筋の」とありましたが、ゆっくり歩くときの筋グリコーゲンは、大腿部に限らず、全身的に使われていたと思います。

歩行という動作は、ほぼ、全身運動です。

脂肪酸についても、大腿部や下腿部周りの中性脂肪が分解されたとは限らず、全身的に使われたものと思われます。

例えば、運動後に筋肉痛になったとして、その部位の筋グリコーゲンが使われたから筋肉痛になったということではありません。

筋肉痛は、その部位の筋を強く、あるいは、長時間収縮したからであって、酷使した筋繊維の修復の「証し」です(…といわれています)。

しかし、実際には、いまだに筋肉痛のメカニズムは解明されていませんので、もしかすると、筋肉痛とは、その部位の筋グリコーゲンの枯渇…という可能性も、あるかも知れませんね。

確かに、主働筋のグリコーゲンは、消費されていると思います。

筋にグリコーゲンを貯えているということは、その筋を素早く動かす為に他なりません。

中性脂肪は、常に分解され、クエン酸回路で水と二酸化炭素に分解される過程でATPを産出していますので、人のエネルギーシステムは、まさに、機序の違う二つの動力源、エンジンと電気モーターで動く、ハイブリッド車のようですね。

グリコーゲンの蓄積は、肝臓に約500kcal、筋に約1,500kcal分といわれています。

肝臓に蓄積されたグリコーゲンは、脳へのブドウ糖供給の備えですが、一日絶食すると枯渇するといわれています。

ともつまよさんが歩いた距離は、25㎞ですから、仮に体重が50㎏として、50×25÷2=625kcalが、今回、消費したであろうエネルギー量です。

この625kcal分すべてを、グリコーゲンの分解でまかなう訳ではありませんので、必ずしも、糖質を補給する必要はなかったと思います。

補給は大正解ですが、利尿作用のない「水」がベストだったかもしれませんね(ポカリにも、利尿作用はないでしょうが…)。

ATP生成のエネルギーシステムは、実に興味深いものです。

こちらにも、分かり易く書きました。

職場のナースから、「かなり専門的なものが書いてあるけど、分かり易ですね」と評されました。

「看護学校時代を、思い出しながら読みました」と…(笑)。



お陰様で、8月下旬に第3刷の増刷が決まり、初版から合わせて17,500部となります。

グリコーゲンの分解作用については、世の中に少し誤解もあるようです。

この辺りも、詳しく書きましたので、是非!

次作は、寝たきりにならない「かんたん体操」かな…(笑)?!

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